一本道をたどっていくとマウンテンバイクの車輪が重たくなってきました。泥がこびりついています。上り坂がきつくなってきたのでアズマ記者は歩くことにしました。泥の固まりになってしまった愛車は肩にかつぎます。彼女、ちょっとした怪力かも。少しずつチョコレートをかじりながら、コブタくんたちは無事だろうか、何のために誘拐されたのか、泥の水博士はいったい何者なのか、さっきみたいな不思議な敵は他にもいるのだろうか、疑問が次々とわいてきます。そして疑問が多ければおおいほど、アズマ記者は燃える性格です。泥付き自転車、約２０キロをかついで紅潮している彼女はかなり魅力的です。潜望鏡で見ていた泥の水博士はアズマ記者と会って話がしたくなりました。

ズズズズズ、、地面が大きく揺れ、盛り上がった泥山の中央に巨大な建物が出現しました。「泥の城へようこそ。歓迎するよおん。自転車はそこにおいて、まっすぐ入ってくるだよ。」城というよりはピエロの帽子です。この奥に泥の水博士たちがいる。一瞬まよいましたがアズマ記者はまっすぐ進みました。次々と自動ドアが開き、奥へ奥へと。

「やあ、アズマ記者。千葉県出身２４歳。好きな食べ物は手打ちうどん。身長155センチ、体重45キロ。」大きなテーブルの向こうにゆったりと座った泥の水博士が読み上げます。個人データを入手したようです。「でも今の体重は４７.6キロ。君が歩いてきた所にはいろんなセンサーがついてたんだよおん。」モニターを見ている博士はうれしそうです。「おや、スリーサイズは、、」「セクハラですっ。それに、体重は体についた泥の分も含まれているから本当はもっと少ないはずです。」アズマ記者は何をしに来たか忘れてまっ赤になりました。

「まあ、すわりなさい。泥のついたままでけっこう。その椅子も泥で出来ておる。」急にえらそうなしゃべり方になりました。
えっ？このきれいな色の椅子が泥で、と思ったアズマ記者の心を読んだように博士が話し始めました。
「絵の具の赤と黄色を混ぜるとどうなるかな？オレンジ色になる。青と黄色だと緑になる。じゃあ絵の具箱の全ての色を混ぜたら？汚い色になるだけ。泥の色なんだよおん。プリズムで色を分けるように、ボクは泥を分けることができる。きれいな色の成分にね。この城全体が泥から作られているんだよおん。おっと話が長くなるな。ピー彦、お茶とお菓子。」
え？ピーコ？ふりかえったアズマ記者が見たものは、、