立ち上がろうとするたびに、ツルツル。起きあがろうとするたびに、ヌルヌル。全身が甘いバナナの香りに包まれてクラクラ。でもあたしは前に進むの、コブタくんたちを助けるの。
と言ってみたけどワルワルイエローはにやにや笑っているだけ。「無理ですよ。泥の水博士が品種改良したスベールバナナだもん。世界征服用に開発された優秀バナナさ。すっごく渋いから売れなかったけどもし、おいしかったらとっくに世界が破滅してたんだよ。」たしかに世界中がツルツルヌルヌルになったら大騒ぎです。

何か使える道具はないか、すべり止めになるようなものは、バナナ坊やをやっつける武器は、アズマ記者はシャツのポケット、ズボンのポケット、上着のポケットをさぐります。もちろんそのたびにツルツルひっくりかえるから大変です。ハンカチ、テッシュ、口紅、のど飴、役に立ちません。へとへとになって最後に取り出したのはチョコレートでした。これを食べてスタミナつけるか、とあきらめたとき、「だめーっ、だめだめだめだめ、だっめー」ワルワルイエローの顔が恐怖にひきつっています。いつの間にか黄色い道は茶色くなってます。おそるおそる立ち上がると、平気です。さっきまで漂っていたバナナの香りは消えて、今はチョコレートの甘い香り。どうゆうこと？

「バナナの本能です。チョコレートに会うとチョコバナナになっちゃうんだ。僕たちのバナナパワーは超強力で敏感すぎるんです。ああっ」と言っている間にも顔がどんどんチョコレート色に。プツプツとカラフルなニキビもできて、おいしそうです。

チョコバナーナになったワルワルイエローは泣きながら逃げていきました。アズマ記者はマウンテンバイクにまたがり追跡再開です。道がチョコっとベトベトしてるけど。