「すっきりしたー」「おなかすいたー」「食べたら出るんだよ、博士」さっきまでの緊張感はすっかり消え去って、ほのぼのとした空気になりました。コブタたちの肛門から出たのが、やさしい香のオナラだったから、かもしれません。そして「おなかすいたー」の声にみんなが笑って、かなり早い朝食が始まりました。研究所の全員を心配させ、少しは反省しているのかコブタたちは少食気味。パンとベーコンエッグとヨーグルトと納豆を少々。この肛門描き忘れ事件は翌日の記者会見で笑い話として紹介されましたが、事件の本当の重大さに気がついたのは風船博士のほかにはもう一人、ワルワル団総帥、泥の水博士だけでした。

朝食のあと風船博士はコブタたちに言いました。「オナラをしたくなったら、この部屋でするんじゃよ」小さい箱のような部屋の入口に赤い文字で＜コブタ以外の入室を禁ず＞と書いてあります。博士とヨシオ君はオナラガスがどんな成分でできているのか質量分析を始めました。同時に最新式の高速ガスクロマトグラフィーや高周波プラズマ発光分光分析の装置を手配、新しい研究テーマの申請書を緊急提出、地球環境国際連絡会議事務局に臨時議題の連絡、コブタたちの食券の購入、やることいっぱいで大忙しです。

１０日間、分析を行った時点で風船博士は２回目の記者会見をひらきました。題目は「風船人形による食品の高分解反応経路の研究およびそれを利用することによって可能となる地球ゴミ問題の新しい解決方法の提案」、簡単に言ってしまえば「ウンコの代わりに無害のガスを出す風船人形のおかげでゴミ問題が一挙解決するじゃん」です。

「本日はお集まりいただきありがとうございます。研究の途中段階でこのような発表を行うことは極めて異例ではありますが、テーマの重要性が国際的、いや宇宙的に歴史的に、ビックリ仰天くるりんドッカーンなわけで、、、、」やっぱり風船博士は記者会見でアタフタ。
「コブタさんが地球環境を救ってくれるわけですね」、赤毛の若い女性記者がニッコリと助け船を出してくれました。胸には＜正美新聞＞、聞いたことのない会社です。「おお、その通りじゃよ。我々が分析を行った結果、ハンバーグ定食を食べたあとのコブタオナラ成分は窒素、酸素、および微量の香料、全く無害のものだったんじゃ。他には全くない。信じられない話じゃがコブタ君たちの食物分解能力は現在最先端の化学工場でも実現不可能なレベルなんだよ。試しに臭いをかいでいただきたいと思うのだが、いかがかな？コブタ君たち、入っておいで」ドキドキした記者たちが顔を見合わせたとき、部屋にかけこんだのは真っ青な顔をしたヨシオ君でした。「コブタが、誘拐されました！」